シリーズ3回目は、「現状の能力把握」の続きで、身体能力の詳細化です。
ここまでの情報を整理しながら話を進めていきます。
全ての競技のベーススキルとなる力学的エネルギーをコントロールする能力は、身体能力と運動能力という2つの視点で捉えることができます。
身体能力はスポーツパフォーマンスの限界値となり、備わった身体能力をどこまで引き出せるかは運動能力によって決まります。
どんなに運動能力が高くても、身体能力の限界を超えたパフォーマンスを発揮することはできません。
また、どんなに身体能力が高くても、運動能力が低ければ備えているパフォーマンスを発揮することはできません。
そのため、身体能力と運動能力は、バランス良く成長させることが必要です。
(直接的に競争相手との攻防が必要な競技では、身体能力と運動能力以外の能力が必要もです。それについては、おいおい記していきます。)
さて、身体能力と運動能力という2つの視点を、それぞれを詳細化していきます。
身体能力は、力学的エネルギーを転換させるための機能で、直接的に動作に関わる部位と間接的に関わる部位とがあります。
直接的に関わる部位には、骨や関節、靭帯、筋肉、腱などがあります。
これらを総じて運動器系といいますが、それぞれの機能について記していきます。
- 骨:体の構造を支える役割。骨の強度が体で扱える力学的エネルギーの上限となる。
- 関節(軟骨):骨と骨の結合部位。関節にかかる衝撃緩和と骨と骨の磨耗を防ぐ役割。
- 靭帯:骨と骨を結合する役割。間接の不可動方向への強度。
これら3つは、力学的エネルギーを支えるフレームの役割となります。
- 筋肉:収縮により関節部位を動かす、もしくは保持する役割。筋収縮による力学的エネルギーを発生させる役割。重力を利用した力学的エネルギーを制御する役割。腱を引き延ばし力を溜める役割。
- 腱:骨と筋肉の結合。引き伸ばされると元の長さに戻ろうとするバネのような役割。バネの反発力による力学的エネルギーを発生させる役割。
これら2つは、力学的エネルギーを発生させたりコントロールしたりする役割となります。
間接的に関わる部位には、感覚器系、呼吸器系、内分泌器系、神経系、循環器系などがあります。
- 感覚器系:光や音、臭い、味、温度、圧力、振動、加速度などの情報を取得する器官。行動を起こす際の判断基準となる情報を獲得する役割。
- 呼吸器系:酸素と二酸化炭素の交換(街呼吸)をする器官。
- 内分泌器系:各組織や器官のコントロールをするためのホルモンを放出する器官。
- 消化器系:各組織や器官の形成材料や活動エネルギーを獲得する器官。
これら4つは、運動器系にも伝えられる情報の獲得や形成の役割を持ちます。
- 神経系:感覚器系から得た外部情報の中枢神経への伝達と中枢神経からの指令を運動器系に伝える役割を持つ。
- 循環器系:心臓や動脈、静脈、毛細血管で成り立っている、栄養や酸素(二酸化炭素)を伝達する器官。運動器系に稼働のためのエネルギーや組織を形成するための材料を伝達する役割を持つ。
これら2つは、上の4つで獲得した情報を、運動器系にも伝達する役割を持ちます。
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身体能力は上述したように様々な構成要素で成立していますが、どの要素であれトレーニングによって高度化することが可能です。
次回は「運動能力の詳細化」の予定です。